メールマガジン Vol.194(2025/4/30発行)

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一般財団法人ダイバーシティ研究所 メールマガジン
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Vol.194 (2025年4月30日発行)

自治体におけるダイバーシティ・多文化共生推進

 昨年6月の当メールマガジン(https://diversityjapan.jp/mailmag20240605/)で、日本のダイバーシティ推進が「第3ステージ」に入ったと書きました。民族や性別といった「表層の属性」ヘの配慮を中心とした第1ステージから、価値観や考え方などの「深層の属性」へ配慮が拡がった第2ステージを経て、マジョリティの意識変革を通した社会全体の機運醸成の第3ステージに進んでいくのではないかという主旨と、その例として、仙台市がOECDの「インクルーシブ・グロース」の理念に沿ったダイバーシティの指針づくりに着手されることを紹介しました。

 仙台市ではその後も検討会で議論を重ね、2025年3月に「仙台市ダイバーシティ推進指針(
https://www.city.sendai.jp/kikaku-suishin/diversitypromotionalguidelines.html)」が策定・発表されました。仙台市の歴史や文化背景をふまえ、「誰もが安心して住み続け、活躍できるまちの実現」によって「世界から選ばれる都市」をめざす内容となっています。4つの視点から取り組むべき施策を整理し、さらにはデジタルの力で多様性から生まれる好循環を促していこうという意欲的な指針となっています。

 このほかにも昨年度、私はいくつかの自治体のダイバーシティや多文化共生の推進指針・プランの策定に関わりました。いずれもこの3月に無事、策定となりましたので、以下に簡単に紹介いたします。

 ジェンダーギャップの解消で長年、ユニークな取り組みを続けてこられた兵庫県豊岡市では「多様性推進方針」
https://www.city.toyooka.lg.jp/kurashi/1032412/1033169.html を策定しました。元国連開発計画職員でジェンダー・スペシャリストの大崎麻子さんと私がアドバイザーを務めましたが、検討会のメンバーは地元の方々だけで構成され、ワークショップを重ねて現状や課題、これからの取り組みを整理した力作です。加速化する人口流出を食い止め、多様性配慮で誰もが活躍できる地域をつくることで持続可能なまちを維持したいという自治体には、ぜひ参照していただきたい内容です。

 多文化共生の分野では、北海道苫小牧市の「多文化共生推進指針」
と広島県福山市の「福山市多文化共生推進プラン」https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/tayouseisyakai-suishin/360165.html
の策定に関わりました。

 苫小牧市では2023年度に「多文化共生推進ビジョン」を発表したうえで、さらに1年をかけて分野ごとに必要な施策を議論して新たな指針を策定しました。外国人増加率が全国で3位になるなど外国人住民が急増する中で、日本語教育や相談支援といった必要なインフラを整えつつ、住民への合意形成も促していく内容となっており、在留資格「特定技能」や2027年から導入が予定されている「育成就労」を見据え、これから外国人が増えていくことが見込まれる地域にとって参考になるものです。

 福山市では市単独のプランに加え、生活圏が重なる備後圏域7市2町が参加する「びんご圏域多文化共生推進ビジョン」を策定した点が特徴です。総務省の調査
https://www.soumu.go.jp/main_content/000997666.pdf では、2024年4月現在で多文化共生に関する指針・計画を単独で策定している自治体は171と全体の1割に留まっており、ここ数年は伸びが鈍い状態です。人口規模小さい自治体や外国人人口割合が低い自治体で取り組みが少ない状況となっており、こうした市町村が単独でプランを策定して計画的に取り組みを進めていくのは難しいと思われます。今後は生活圏が重なる地域ごとに、中核となる市が周辺の自治体と連携して方針を策定し、日本語教育や生活支援といった社会インフラも共同で整備していくことが望ましいと考えられ、今回の備後圏域での取り組みがモデルとなることを期待しています。

 トランプ大統領の言動によって、DEI(Diversity多様・Equity公平・Inclusion包摂)への関心が高まっています。なぜアメリカは方針転換したのか、もはやダイバーシティ推進なんてやめた方が良いのか、質問される機会が増えています。私はトランプ大統領を再選された背景には「マジョリティの不安」があると考えています。マジョリティの不安については2023年9月の当メールマガジン184号「“マジョリティの不安”が分断する社会(
https://diversityjapan.jp/dl/20230908.html)」をご参照ください。これからのダイバーシティ推進は、マイノリティのエンパワメントに加え、マジョリティの不安解消が鍵となります。自治体が指針や方針を示し、市民とともに合意形成を図りながらダイバーシティを推進する歩みを止めてはなりません。

 新年度も複数の自治体でプランや指針づくりに携わる機会をいただきました。ダイバーシティと多文化共生への流れをこれからも確実なものとして、誰も排除されない持続可能な地域の形成に尽力いたします。引き続きお力添えのほど、どうぞよろしくお願いします。

ダイバーシティ研究所 代表理事
田村太郎


【田村登壇のイベント 2025年7月23-25日 全国市町村国際文化研修所

全国市町村国際文化研修所 令和7年度研修
持続可能な地域社会の形成とダイバーシティ~多文化共生からダイバーシティへ~
世界最速のスピードで進展する少子高齢化により、日本における持続可能な地域社会の形成は危機的な状況にあります。地域や職場におけるこれまでの均質的なあり方を転換し、人のちがいに配慮のある地域づくりを進展させることが求められています。この研修では、「職場」「地域事業所」「地域住民」の視点からダイバーシティ推進に係る様々な課題を認識し、これからの地域社会のあり方や自治体が各所と連携するための手法を考えます。

日時:2025年7月23日 (水)~7月25日 (金) 申込締切は6月4日(水)
場所:全国市町村国際文化研修所 (JR京都駅より湖西線約15分 唐崎駅下車徒歩約3分)
対象:ダイバーシティの推進に携わる自治体職員等
詳細:https://www.jiam.jp/workshop/tr25205.pdf


【お知らせ1】

1. 2024年度輪島市災害たすけあいセンター運営支援事業報告書  
当研究所では輪島市の被災者生活再建支援機関である「輪島市災害たすけあいセンター 」の運営支援として、2024年度に被災者アセスメントに基づく地区別特性分析、生活課題と地域の支援リソース検討、電力データ分析による居住実態調査、地域支援リソースのマッピングの事業を実施しました。事業報告書を公開しましたのでご覧ください。

2.  HAPIC2024開催報告
JANICが主催した国内外のグローバルな社会課題解決に関わるアクターが出会い、学び、連携を促進するカンファレンス「HAPIC」の昨年度の分科会の様子が動画で公開されています。
https://www.janic.org/blog/2025/02/14/hapic2024-report/
当研究所も参画する多文化共生ワーキンググループが昨年12月16日に実施した「国際協力NGOの多文化共生領域への拡大」も動画で見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=pPo_UvTQl_4

【お知らせ2(関連団体の広報)】

1. 『ひときわ音楽祭 in EXPO2025』(5月25日)とクラウドファンディングのご案内
障害の有無に関わらず多様な人々が一緒になって作るボーダレスな無料野外音楽フェス「ひときわ音楽祭」が、今年は大阪・関西万博のステージで開催されます。この活動に充てる資金として、200万円を目標としたクラウドファンディングを実施しています。

2. 国際文化フォーラム職員募集(応募〆切 5月31日)
「多様な背景をもつ人たちとともに、すべての人がより自由により対等に生きられる世界を創り未来につなぐ」ことを新たなビジョンに掲げた国際文化フォーラム(TJF)で事業をともに企画・運営する職員を若干名募集されてい

3. チャイケモウォーク2025(5月31日)
神戸にある小児がんなどのお子さんと家族の滞在施設「チャイルド・ケモ・ハウス」のチャリティウォークが開催されます。初夏の神戸を歩きながら、小児がんを始めとする子どもと家族への関心を高め、施設運営を応援するイベントにぜひご参加ください!

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