一般財団法人ダイバーシティ研究所 メールマガジン
当研究所の活動や「ダイバーシティ」についての情報をお届けします

Vol.184 (2023年9月8日発行)

“マジョリティの不安”が分断する社会

 今年は関東大震災から100年の節目ということで、9月1日の前後にいくつか取材や原稿の執筆依頼を頂きました。そこで私は増しつつある「不安」について、語ったり書いたりしました。

 震災直後の報道や警察の資料などから、「井戸に毒を入れた」というデマを信じた人々が朝鮮人などを殺害したことは紛れもない事実と思われます。関東大震災のことを授業で学んだこどもの頃、私は、当時はラジオ放送もまだ始まっておらず、正しい情報が伝わらなかったことが背景にあるのだろう、いまは正しい情報を誰もが手に入れられるのだからもうあのようなことは起きないだろう、と感じたことを覚えています。技術の進歩は私たちを正しい方向に導いてくれる、人々が互いのことを正しく理解すれば、デマを信じて他者を殺すことなどないだろう、と。

 しかし現実はどうでしょうか。残念なことに、災害が起きるたび、見たくもないひどい卑語がSNSに飛び交っています。阪神大震災のときも外国人に関するデマはありましたが、インターネットの発達やスマホの普及により、悪質なデマやフェイクニュースはさらに拡大させているようです。なぜ私たちの社会はこうも進化できないのでしょうか。

 内外を問わず、マイノリティの権利が保障されればされるほど、従来のマジョリティは自らの権利や地位が脅かされるのではないかと不安になり、より排他的・保守的になっているように思います。またその傾向は景気の後退期や政治の混乱期により高まっており、また景気の後退や政治の混乱がマイノリティの不安をさらに高め、マイノリティへの排斥を助長するスパイラルが加速して行くようにも見えます。いま首都直下地震が起きたら、100年前と同じことか、さらにひどいことが起きてしまうのではないかと不安でなりません。

 ダイバーシティ研究所は2007年に設立し、ささやかながら多様性が尊重される社会を作っていこうと努力を積み重ねてきました。この間、少しはマイノリティの存在や権利に社会の目が向けられ、互いのちがいを認めあい、対等な関係を築こうとしながら共に生きていく社会に向けて、少しは成果も感じられる気がしています。まだまだ「マイノリティの不安」の解消にはほど遠い状況ではあるものの、これから私たちは「マジョリティの不安」にもっと目を向け、その解消にも向き合っていく必要があるのではないでしょうか。

 自分はマジョリティだと思っていた人が社会から転落したとき、その恨みの矛先はマイノリティに向かいがちです。マイノリティの権利を保障しても、マジョリティの権利が損なわれるわけではありません。さまざまな人と出会い、互いを認め合えるような機会をたくさんつくり、ちがいを受け入れつつともに生きていける社会を丁寧に作っていくことで、マイノリティの不安もマジョリティの不安も和らいでいく。そんな空気を醸成していきたいものです。

一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事
田村太郎


【田村登壇のセミナー1 2023年 9月19日 】

日本財団ウクライナ避難民支援シンポジウム
「避難民と共に考える、これからの共生・活躍社会」
日本財団ではウクライナ避難民2,000人のデータや生の声を調査・分析するとともに、支援団体や、有識者委員会の助言を得て、「日本財団ウクライナ避難民支援の現状報告及び避難民等の共生・活躍のための支援制度に関する提案書」を作成しました。今回のシンポジウムでは「提案書」を発表するとともに、避難民の方々に登壇いただき、本当に必要な支援のあり方を皆様と一緒に考えるものです。

日時:9月19日(火) 14:00
会場:Zoomオンライン会議

【田村登壇のセミナー2 2023年10月〜】

公益財団法人かめのり財団
2023年度 多文化共生地域ネットワーク支援事業
現在、国内では外国人の受け入れや共生施策への必要性や機運が高まる一方で、地域における推進の担い手が不足しているという状況です。このような状況から、担い手と、事業を進める組織の育成が急務と考え、多文化共生に向けた担い手育成とネットワーク形成のため研修会およびネットワーク会議を実施し、地域で多文化共生を推進する核となる人材が集い、相互研鑽する場となることを目的とします。

以下の3つのプログラムで構成されます。1と2は参加必須です。
 1 かめのり多文化共生塾
 2 多文化共生の担い手ネットワーク会議
 3 事業助成
対象地区 / 協力団体名 / 会場
東海・北陸地区/犬山国際交流協会/犬山市民交流センター「フロイデ」
近畿地区/NPO法人場とつながりの研究センター/三田市まちづくり協働センター
北海道・東北地区/奥州市国際交流協会/水沢地域交流館(アスピア)

詳細・お申込み:
https://www.kamenori.jp/network2023/

【田村登壇のセミナー3 2023年 10月21日 出雲市 】

どうなる日本、これからの人口減少時代 
~外国人住民と一緒に創る持続可能な地域づくり~
日時  令和5年10月21日(土)9時30分~11時30分
会場  出雲市役所本庁1階 くにびき大ホール
内容  外国人との関わり方や、外国人住民と一緒に創る地域づくりについて

【お知らせ】

1.「ウクライナ避難⺠⽀援のこれまでとこれから」開催報告
2023年7⽉4⽇にオンライン方式で開催しました「ウクライナ避難⺠⽀援のこれまでとこれから 〜事例発表と⽀援者同⼠のネットワーキング〜」につきまして開催報告書PDFを公開しました。


2.「新たな備えサポート隊 in 松山」サポーター募集
災害多発時代・ウィズコロナ時代の地域防災に求められる「新たな備え」と 高齢者等支援が必要な世帯への訪問を通じて「誰ひとり取り残さない災害対応」をめざす、 サポート隊の派遣による災害への備え事業を愛媛県松山市において2023年10月に実施します。支援世帯を訪問し、棒先器具の取り付け等を行う「新たな備えサポーター」を募集中です。

詳細・お申込み: https://sonaetai.net

3.日本経済新聞に田村のコメントが掲載されました
「首都の弱点 関東大震災100年 学び防ぐ (5)外国人114万人、避難戸惑い」(9/2)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74117460R00C23A9CM0000/

当研究所へのご連絡について

当研究所では原則としてリモートワークを実施しています。ご連絡につきましては、可能な限り電子メールにて対応いただければ幸いです。

事務局代表アドレス
office@diversityjapan.jp

※当メルマガのご登録・ご解約はこちらのページからお願い致します。
 
https://diversityjapan.jp/mail-magazine/
※当メルマガへのご意見・お問い合わせは、下記連絡先までお寄せください。

【ダイバーシティ研究所 メールマガジン】
発行日:不定期
発 行:一般財団法人ダイバーシティ研究所(DECO)


東京事務所
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18
アバコビル5F
Tel: 03-6233-9540 Fax: 03-6233-9560
大阪事務所
〒532-0004 大阪市淀川区西宮原 1-8-33
日宝新大阪第2ビル802
Tel: 06-6152-5175 Fax:06-6195-8812