メールマガジン Vol.191(2024/11/5発行)

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一般財団法人ダイバーシティ研究所 メールマガジン
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Vol.191 (2024年11月5日発行)

ことばさがしの旅*¹

 私が好きな絵本のひとつに「フレデリック」*²という野ねずみの話があります。冬を前に他の野ねずみたちがせっせと食料を集める中、フレデリックはボーっと景色を眺めています。いつまでも働かないフレデリックに仲間たちは「ゆめでもみているのか?」と尋ねます。フレデリックは「ちがうよ、ぼくはことばをあつめてるんだ」と応えます。冬を迎え、実際に食べ物が底をつくと、フレデリックは仲間たちに冬が来る前に自分が集めてきた色や光、ことばについて話しかけます。仲間たちはそのことばに気持ちがあたたかくなり、これから春が来れば自分たちにどんな役割があるのか、それぞれにイメージをし始めるのでした。

 実際に野ねずみたちがそんな会話を交わしているかはわかりませんが、少なくとも私たち人間には「物資」や「住まい」と同じくらい、「ことば」は重要な意味を持つと私は思っています。阪神・淡路大震災から30年、私は物資の支援や建築物の整備といったハード面での支援ではなく、被災者の全体像や過去の事例を俯瞰しながら、いま起きていることはこういうことではないか、これからこんなことが起きるのではないか、といった「ことば」をさがし続けてきました。被災した世帯を訪問してご様子を伺う私たちの活動は「パソコン隊」等と揶揄されることもありましたが、集めたことばをもとに被災地の課題を整理したり、今後の支援計画に役立てたりしてきたことは確かに意味のあることでした。

 それは被災地の復興に限ったことではありません。「多文化共生」や「ダイバーシティ」といったことばを紡ぎ出し、広めていくこともまた、あるべき社会の方向性を切り拓き、これまでの価値観や倫理観に縛られて暗闇の中にいる人たちに一筋の光を届けていく、大きな力があると思うのです。
 
 しかし、どうにも「ことば」が出ないこともあります。

 ダイバーシティ研究所では本年2月から展開してきた石川県の「被災高齢者等把握事業」による訪問活動と並行し、輪島市役所との委託契約とYahoo!基金からの助成をもとに、3千件を超える世帯の「ことば」に耳を傾け、今後の「地域支え合いセンター」による支援計画の立案や、NPO等による支援とのマッチングに生かすためのデータ整理にのぞみ、ようやくその概要をとりまとめました(
https://diversityjapan.jp/2024-wajima-research/)。
 が、その直後、能登半島は再び大きな災害に見舞われることとなりました。私も先日、輪島を訪問して現地の様子をうかがいましたが、まさに「ことば」が見つかりませんでした。

 しかし、この間に集まった3千世帯を超える「ことば」の数々があるからこそ、今回の水害の影響や世帯の変化も知ることができます。水害の直後から私たちは輪島市社会福祉協議会と連携しながら、被災された世帯を再び訪問し、そこから見えてくる「ことば」を改めて整理し、今後の支援計画の策定に臨んでいます。被災地はこれから厳しい冬を迎えます。でもその先にはまた必ず春がやってきます。いまかけられる「ことば」はすぐには見つからなくても、次の春や、またその先の生活再建に向けた道筋を照らす「ことば」さがしの旅を、私たちはこれからも地元の人たちと共に続けていきたいと思っています。

ダイバーシティ研究所 代表理事
田村太郎

*¹「ことばさがしの旅」というタイトルは、私の母校兵庫県立伊丹高校で現代国語を担当されていた藤本英二先生が1988年に「高校出版」から発刊された本のタイトルから借用しました。

*²「フレデリック」は「スイミー」などで有名なレオ=レオニの作品で、谷川俊太郎訳による「好学社」の1969年刊行(第11刷1978年版)から一部を引用しました。そして私の手元にある本は、先日亡くなられた神戸のレジェンド・小林郁雄さん
https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202410/0018194028.shtml が、私に長男が生まれたときたくさん寄付してくださった絵本の中のひとつでした。


【田村登壇のイベント1  2024年11月9日 亀山市】

避難所における外国人受入れ訓練
大規模災害が発生した場合、日本人だけでなく外国人も被災者となり、言葉や習慣の違いでより深刻な状況に置かれることもあります。本訓練では、多様性に配慮した避難所の運営について実践的に学びます。

日時:2024年11月9日(土曜日)午前10時30分~午後3時30分
場所:午前:亀山市御幸地区コミュニティセンター
   午後:亀山市中央コミュニティセンター
費用:無料
詳細:https://www.city.kameyama.mie.jp/docs/2024100900044/


【田村登壇のイベント2  2024年11月22日 愛知県 】

人権を考える企業者のつどい
愛知県では、企業の皆様に、企業の社会的責任として人権尊重の理念を再認識していただくとともに、働きやすく、信頼される企業づくりを進めていだだくことを目的として、2002年度から「人権を考える企業者のつどい」を開催しています。
 今年度は、田村太郎氏を講師にお招きし、「企業の社会的責任と人権~持続可能な職場づくりと多様性配慮の視点から~」をテーマにお話しいただきます。

日時:2024年11月22日(金曜日)午後2時から午後4時まで
場所:愛知県産業労働センター(ウインクあいち)5階小ホール1
費用:無料
詳細:
https://www.pref.aichi.jp/press-release/jinkentsudoi-20241122.html


【田村登壇のイベント3  2024年11月30日 白山市】

白山市多文化共生デー
白山市では、国籍に関係なく誰もが安心して元気に暮らせるまちづくりを目指しています。講演会やワークショップに参加し、多文化共生について考えてみませんか。

日時:2024年11月30日(土曜日)午後1時30分より
場所:白山市松任学習センタープララ コンサートホール


【田村登壇のイベント4  2024年12月7日 宮崎県 】

宮崎県国際交流協会多文化共生講座
多文化共生分野の第一人者である田村太郎氏を講師に迎え、深刻な少子高齢化の進む宮崎で、外国人住民と共にどのように未来を築いていけるのか、そのヒントを探ります。
参加無料。外国人受け入れ・支援に関わる方、多文化共生に関心がある方、どなたでもご参加いただけます。

日時:2024年12月7日(土) 14:00~16:00
場所:宮崎県企業局1階 県電ホール
費用:無料
詳細:
https://www.mif.or.jp/news/11040/


【田村登壇のイベント5  2024年12月14日 名古屋市】

名古屋国際センター40周年記念 
映画から考えよう!~多様な背景を持つ人々と”向き合う”こと~
この地域で制作された映画「フィリピンパブ嬢の社会学」の鑑賞や原作者の話を通して、外国人住民を取り巻く現状や課題を知り、日本人と外国人が一人の住民同士として共に地域をつくっていくために、大切なことは何かを考えます。

日時:2024年12月14日(土)13:00~17:00
場所:名古屋国際センター 別棟ホール


【田村登壇のイベント6  2024年12月16日 オンライン 】

JANIC HAPIC2024vol.5:「国際協力NGOの多文化共生領域への活動拡大」
2027年からの新たな外国人受入れ制度が創設される一方で、外国人への日本語教育や住まいの確保、また支援にあたる人材などの社会資源の不足が大きな壁となっています。JANICに昨年発足した「多文化共生ワーキンググループ」でのこの1年の活動をふりかえると共に、能登半島地震での外国人の様子や総務省にうおる自治体調査の概況などを共有し、国際協力分野での知見を地域の多文化共生領域にどのように生かしていくのか、参加者とともに考えます。

日時:2024年12月16日(月)14:00~16:00
場所:オンライン
費用:無料
詳細:
https://www.janic.org/blog/2024/11/01/hapic2024-tabunka/


【お知らせ】

1. 輪島市における能登半島地震で被災された世帯の「次の生活への移行」に向けた調査
巻頭言でもご紹介しましたが、ダイバーシティ研究所では「令和6年(2024年)能登半島地震」で大きな被害を受けた石川県輪島市における被災者の生活実態を調査し、今後の被災者支援に役立てることを目的として、被災された世帯の「次の生活への移行」に向けた調査事業を実施しました。被災世帯3096件の調査結果報告書を公開しましたのでご覧ください。

2. 書籍「医療通訳者の仕事」ご案内
長年、医療通訳として活躍されている中萩エルザさんがこのたび、「医療通訳者の仕事」を出版されました。これまでのご経験をもとにわかりやすくポイントをまとめられています。下記にインタビュー記事も掲載されています。

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