第4回 「ダイバーシティ社会の形成とソーシャル・ビジネス〜社会福祉法人むそうの実践から〜」
NPO法人ふわり/社会福祉法人むそう
理事長 戸枝陽基
日本福祉大学卒業。卒業後、障害者施設で7年間勤務。重症心身障害や自閉症、精神障害の方などと関わる。退職後、1年間の準備期間を経て、1999年「生活支援サービスふわり」運営開始。翌年法人化して、「NPO法人ふわり」とする。2003年社会福祉法人むそう認可・設立。現在は、NPO法人ふわり並びに社会福祉法人むそう 理事長などを務める。
『ハンディキャップ』とは何か、暮らすために『大切なもの』を支える
ハンディキャップのある人に何を支援するのかというのは、暮らしの中で大切なものを考えたときに、見えてきます。住むところ、食べるための仕事、経験を積むこと、教育を育むことが、支援の4つの柱です。
ハンディキャップがとても多様であることや、障害者が持っている「こだわり」に生産性を添えると、仕事もできます。
社会福祉法人むそう(http://www.musou03.org)では、ラーメン店や喫茶店、農業など、日中活動で働く環境を作ったり、グループホームの運営や、児童発達支援サービスなど、暮らしの4本柱を支援しています。
地域のネットワークで支えきる仕組みを社会のシステムに組み込む
人口統計から福祉施設や病院の数、世帯状況などを研究していくと、孤独死で亡くなる人の数がわかります。日本では、日数が経過して発見され孤独死が見つかるなど、孤独死に対するシステムがありません。例えば、オランダの場合、訪問看護ステーションが中心となり、地域巡回型のヘルパーや看護師が網の目で地域を見ています。「次に巡回したときは亡くなっている可能性があります」という申し送りがあり、地域全体の状態を把握しています。
利用者にとっての最適を求める、ミッションが正しければ協力者は集まる
むそうでは、子どもの実態を考え、移動距離が短くなるようエリアを小さくし、小規模な看護師がいる保育園のような施設を開設しました。国の補助金で配置できる看護師の人数では、子どもにとっての最適が実現できないので、看護師を本部に一人採用しています。赤字になりますが、利用者にとっての最適を求めるためにいくら必要になるかを整理して、厚生労働省に報告し、メディアにも情報を提供しています。
胃にチューブをしている女の子の父子家庭の支援では、父親の勤務先が子どもと出勤する体制をつくり、仕事の休憩時間にケアを続けました。「離乳食の赤ちゃんと同じ」と保育所と交渉し、今は、保育所に預けられるようになりました。笑ったりわがままを言うようになり、成長していると実感します。
ミッションが正しく、周囲に伝える事ができれば、「私も関わりたい。」とたくさんの人が協力を申し出てくれています。
誰かが環境を作れば、色んな人に影響を与えることが出来る
ご両親が亡くなった脳性麻痺の女性が入所したとき(引き取ったがきついので)、大学生のヘルパーも含め20人くらいのチームを作り、8時間交替で暮らしを支えました。彼女は一軒家に自分の部屋を持ち、昼間の活動ではレジでバーコードを読み込む仕事をしていましたし、ケアをすることで仕事が生まれていました。彼女が亡くなったときには、50人のヘルパーが偲ぶ会を開かれました。彼女と関わったことで、福祉の指導者を目指す人もいました。
彼女は、寝ているだけで、たくさんの人の心を動かしました。環境さえあれば、色んな人に影響を与えることが出来るのです。
既存のあり方を限度と思わず、本当に必要な環境を作り出す、仕組みを作り出すために必要なことを、ありのまま実行していくことで、社会を変えていくことができるのです。
社会福祉法人むそうhttp://www.musou03.org
NPO法人ふわりhttp://fuwari.tv