第5回 「ダイバーシティ社会の形成とソーシャル・ビジネス〜性的マイノリティ〜」

第4回 「ダイバーシティ社会の形成とソーシャル・ビジネス〜性的マイノリティ〜」
特例認定NPO法人虹色ダイバーシティ
理事長・代表 村木真紀

1974年茨城県生まれ。京都大学卒業。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て、「性的マイノリティ(※1)がいきいきと働ける職場づくりを通じて、性的マイノリティとその支援者(アライ)のエンパワーメント、性的マイノリティが暮らしやすい社会づくり」を目指し、2011年11月虹色ダイバーシティを設立(2013年7月に法人化)。LGBT(※2)当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTと職場に関する調査、講演活動を行っている。大手企業、行政等で講演実績多数。

 

※1 性的マイノリティ
性的指向、性自認に関するマイノリティのこと。性的指向は、同性・異性を好きになる等、好きになる相手の性別やアイデンティティを基準とする考え方。性自認は、身体的特徴や社会的役割にかかわらず、自身が「そうである」と強く持続して認識する性別のこと。

※2 LGBT
レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの略称。性的マイノリティの一部の人の自称する言葉を並べたもの。

特例認定NPO法人虹色ダイバーシティ http://nijiirodiversity.jp

LGBTの社会的困難と見えない当事者

LGBTは、好きになる人の性別が異性だけではない、体の性別にそって指定された社会上の性別と自分の思っている性別が一致しないなど、性的指向や性自認に関するマイノリティの人達のことです。色々なアイデンティティを持つ人達がいますが、その中の4つの頭文字を取っています。LGBTは人口の5〜8%いると言われています。企業の従業員20人に1人はLGBTの人がいるはずですが、企業の人に実感してもらうのは難しいです。

当事者は、自らの性のあり方についてどう思われるか、いつ話せば良いかわからないし、今までウソを付いたことを責められるのではないかと心配になったりします。学齢期に自分の性のあり方に気付く当事者が多いのですが、いじめの対象になったり、男女で分かれる場面の多い学校の仕組みに辛くなってしまう人もいます。ホームレス支援をしている方にお話を伺うと、路上生活者の中にLGBTと思われる人をたくさん見かけるそうです。行政の支援の受付が、男女別になっているために、支援に手を伸ばしにくい状況です。このように、LGBT当事者はメンタル面でも辛い状況にありながら、「見えにくい」という特徴があるのです。

ミッション達成に向けて〜企業へのアプローチ〜

私たちは、「性的マイノリティがいきいきと働ける職場づくりを通じて」性的マイノリティが暮らしやすい社会をつくることにしました。働きかける対象は、企業です。同性愛が罪になる国もあれば、同性婚ができ、差別することが罪になる国もあります。

日本は、同性愛は罪ではないが、権利もないという国です。しかし世界中で事業を行うグローバル企業は、企業としての対応基準を持つ必要があるので、「同性愛を差別することを禁じる」ことを基準にするよう働きかけています。日本企業にとっては、法律以上の取り組みをすることになりますが、グローバルな企業活動や人材獲得競争の中では、やらねばなりません。

大阪市淀川区がまちづくりとしてLGBT支援を始めたり
http://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/category/3265-1-0-0-0-0-0-0-0-0.html)、
渋谷区をはじめとする複数の自治体でパートナーシップ条例が制定されるなど、行政が取り組みを始めると、企業にも「やって大丈夫だ」と安心感が出てきました。

企業で研修や取り組みを進める中で、当事者が見えにくいために理解が進まないときは、国際基督教大学ジェンダー研究センターとの共同調査「LGBTに関する職場環境アンケート」(
http://www.nijiirodiversity.jp/wp3/wp-content/uploads/2016/08/932f2cc746298a4e76f02e3ed849dd88.pdf
や、LIXILと共同で実施した「性的マイノリティのトイレ問題に関するWEB調査」
http://newsrelease.lixil.co.jp/user_images/2016/pdf/nr0408_01_01.pdf)などのデータを元に、話しを進めていきます。

LGBTにとって働きやすい職場は、他の人にも働きやすい職場です。受け入れてもらっているという実感や支援者(アライ)の存在は、当事者の「ここで頑張ろう」という意欲向上につながります。
企業がLGBTに取り組んだ時の受益者は、企業全体だということを、繰り返し伝えています。

企業の取り組みを加速する「PRIDE指標」

企業のLGBTの取り組みは、他社がどの様に進めているか、具体的に職場で出来る事は何か、などの好事例の情報によって加速されます。アメリカでは、The Human Rights Campaignが作成した指標によってLGBTが働きやすい職場のリスト’Corporate Equality Index(http://www.hrc.org/campaigns/corporate-equality-index)’が発表されています.NPOが企業の取り組みを評価し,さらに取り組みを進めてもらおう,というものです。

日本でも実施できると考え、2016年から「PRIDE指標
http://www.workwithpride.jp/index.html)」をスタートしています。2016年応募者数は82社、2017年の応募企業数は110社と、増えてきています。報告会では、600人を超える企業のLGBT担当者が集結し、ベストプラクティスを共有しました。

他の社会課題に取り組む団体とのコラボレーションが取り組みを広げる

虹色ダイバーシティは、企業や行政の取り組みを支援することで、そこで働く当事者の環境を良くしていくという間接支援を行っています。しかし、私たちが直接関わる事ができる地域や会社は限られています。
LGBT当事者は、就学や就労に困難を抱えることが多く、社会問題のハイリスク層に置かれがちになります。だからこそ、他の社会課題に取り組んでいる団体とコラボレーションすることで、取り組みの裾野を広げることが出来ます。世界の子どもを児童労働から守る活動を行っている認定NPO法人ACEと企画した「レインボーチョコ」(http://acejapan.org/info/2017/01/17989)はその一例です。

また、全国6箇所で「LGBTスピーカースキルアップ講座」
http://nijiirodiversity.jp/category/speaker/
を実施し、取り組みを広げる仲間づくりも進めています。

行政や企業とのそれぞれに一長一短があります。企業の場合は報酬をいただくので持続性がありますが、お金のある人が対象になってしまいます。行政との協働であれば、他の行政と繋がりやすくなるなどの長所もありますが、予算の決定など手続きに時間を要します。また、対象となる人が数%になるからこそ、事業のデータを残し、成果を示し、社会に必要であるという説明責任を果たす必要があるのです。

当事者の話を直接聞く機会は少ないかも知れませんが、マンガや映画などを見て疑似体験をしたり、当事者の気持ちを考えてみてもらえればと思います。

コミック「弟の夫」 著:田亀源五郎 双葉社
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/smp/book/bookview/978-4-575-84625-6/smp.html
映画「チョコレートドーナツ」http://bitters.co.jp/choco/
映画「パレードへようこそ」http://www.cetera.co.jp/pride/