ダイバーシティ研究所では、「令和2年7月豪雨」で大きな被害を受けた熊本県八代市・人吉市における被災者の生活実態を調査し、今後の被災者支援に役立てることを目的として、9月1日より「被災世帯ニーズ把握支援」調査事業を開始しました。今後、9月から10月にかけて現地での調査を行い、年内をめどに調査結果の分析および報告を行う予定です。2021年3月9日調査報告書,4月8日保健衛生マネジメント報告書を掲載しました(下段をご覧ください。)

  • 特に被害の大きい熊本県人吉市と八代市坂本町における被災者の生活実態を調査
  • 調査員を熊本県在住者に限定、被災者がオンラインで回答等のコロナ対策を実施


避難所での調査

「令和2年7月豪雨」による被害

2020年7月3日から8日にかけて、梅雨前線の活動が非常に活発となり、西日本や東日本、特に九州では4日から7日は記録的な大雨となりました。熊本県の球磨川では計13箇所で氾濫・決壊し、約1060ヘクタールが浸水しています。特に被害の大きかった人吉市では市街地の広い範囲が浸水し、過去の災害を上回る被害を受けました。また八代市坂本町も甚大な被害を受けており、熊本大学の調査では約5.4mの高さまで浸水していた地区があるとの報告がありました。

ダイバーシティ研究所では両市や諸機関の協力を得て、特に甚大な被害を受けた人吉市と八代市坂本町を対象に、被災状況や生活に関する状況を被災者の方々に伺い、次の生活への移行を支援するための調査事業を実施することとしました

参考資料

令和2年7月豪雨による被害状況等について(9月3日14:00現在) 内閣府
http://www.bousai.go.jp/updates/r2_07ooame/pdf/r20703_ooame_36.pdf

令和2年7月豪雨災害による被害状況等について(第49報) 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001352129.pdf

2020年7月豪雨に伴う熊本県南部における災害調査速報 第2報 熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター
https://cwmd.kumamoto-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/07/report_20200716.pdf

市町村 人 的 被 害 住 家 被 害
死者 行 方
不 明
負 傷 者
重傷
負 傷 者
軽傷
合計 全壊 半壊 一部
破損
床上
浸水
床下
浸水
合計
八代市 4 1     5 164 197 91     452
人吉市 20       20 864 1,379 236 1,532 670 4,681

人吉市・八代市の被害状況 (令和2年7月豪雨による被害状況等について(9月3日14:00現在)内閣府 より)

調査の概要

「令和2年7月豪雨」により特に大きな被害を受けた人吉市・八代市坂本町では、家屋への⼟砂流⼊やライフラインの断絶など、⽇常⽣活に⼤きな制約が⽣じており、現在においても相当数の被災者が避難所等での⽣活を余儀なくされている⼀⽅、被害の実態や全体増が⾒えにくい状況が⽣じています。

そこで、現在の⽣活の状況や今後の⽣活再建に向けたニーズについて、ご⾃宅や避難所等を⼾別に訪問してお話を伺い、特に配慮を要する⽅に今後必要とされる施策について検討を進めていくことを⽬的とした調査を9月から10月にかけて⾏い、年末をめどに調査結果の分析および報告を行うことで、今後の被災者支援に役立てることを目的として実施します。

従来の調査では、被災地の外から調査員を派遣して調査を実施してきましたが、感染防止の視点から調査員は熊本県内在住者に限定し、三密を避けるためにオリエンテーションや当日までのやりとりもオンライン化するなど、活動に工夫を凝らしています。また、被災された世帯の方がスマホやPCから回答いただく「セルフアセスメント(自己評価)」方式も導入し調査員と接触する機会を軽減するなど、新たな取組みを進めています。

主催︓熊本県⼈吉市、熊本県⼋代市
実施︓⼀般財団法⼈ダイバーシティ研究所
協⼒︓KVOAD、熊本県⽴⼤学、熊本県社会福祉協議会、⼋代市社会福祉協議会

※なお、本事業は、Yahoo!基⾦寄付事業として実施いたします。

調査結果

下記の概要で調査を行い、調査結果は「災害ケースマネジメント」に基づいて集計・分析を行い、人吉市、八代市、両市の地域支え合いセンターにお渡しし、被災者支援や復興計画検討の基礎資料として活用されています。
*本調査は、厚生労働行政推進調査事業費補助金(研究代表:浜松医科大学・尾島俊之)およびYahoo基金の寄付を受け、人吉市からの委託および八代市との協定に基づく共同事業として実施しました。

【調査概要】
1. 調査期間
2020年9月5日〜10月31日
2. 調査対象
①人吉市: 3,335世帯(被害が大きい市内19地区を中心とする地域)
②八代市: 1,607世帯(被害が大きい坂本地区の全世帯)
3. 調査人員
熊本県内在住者のべ340人
4. 調査方法
①被災世帯を直接訪問し半構造式面接方式で調査(訪問アセスメント)
②調査対象者本人がパソコンやスマホ等から回答(セルフアセスメント)
③調査員が調査対象者とともにフォームへ入力(来所アセスメント)
5. 有効回答数
人吉市629件 八代市926件
6. 回答率
人吉市18.9% 八代市57.6%

【本調査におけるコロナウイルス感染症への主な対応】

  • 現地調査チームを編成し、県外の調査本部との連携により実施
  • 調査員を県内で募集
  • 調査員の集合研修を圧縮し、動画やアプリによるオリエンテーションを実施
  • 活動前の健康確認、三密の回避、マスク着用、手洗い・消毒等の基本事項の実施
    *JVOAD「災害対応にかかわるボランティア・NPO等の支援者向け感染症対策・予防に関する研修プログラム」を参考に対応しました。

詳細は下記報告書をご覧ください。

 

「令和2年7月豪雨被災者生活実態調査(人吉市・八代市)」調査報告書
PDF(22.3MB)

「誰ひとり取り残さない災害対応をめざして」Yahoo!基金 寄付事業報告書
PDF(15.1MB)

「災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究」(厚生労働行政推進調査事業費補助金・研究代表者:浜松医科大学・医学部健康社会医学講座・教授 尾島 俊之)に、調査プロセス・結果を踏まえ県域のマネジメントに関する報告書「令和2年7月豪雨における被災世帯の被害の実態と生活再建に関する調査報告書〜保健医療福祉マネジメントの状況と課題〜」を納めました。
PDF(2.8MB)

*2020年12月20日開催の「日本災害復興学会 2020年度遠隔大会」において、調査実施・分析について、経過発表を行いました。
https://f-gakkai.net/convention-archive/2002/
*2021年3月19日に「震災問題研究ネットワーク」が開催する「第7回震災問題研究交流会」において、災害ケースマネジメントに関する報告を行います。
https://greatearthquakeresearchnet.jimdofree.com


【参考】実施済み調査の報告書

ダイバーシティ研究所では以下の災害において避難者生活実態調査を実施しています。