第6回 「ダイバーシティ社会の形成とソーシャル・ビジネス〜高齢化社会〜」

第6回 「ダイバーシティ社会の形成とソーシャル・ビジネス〜高齢化社会〜」
社会福祉法人明照会 理事長/社会福祉法人あいく会
理事長 河原至誓

1983年6月生まれ。15歳で得度浄土真宗の僧侶となる。27歳で特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人明照会の理事長に就任。その後、外国人材の活用や人材育成に力を入れ、現在、全国老人福祉施設協議会介護人材対策委員会幹事。「介護福祉士を子供のなりたい職業ランキングTOP10に入れる」を目標に、「介護男子スタディーズプロジェクト(※1)」や映画「つむぐもの(※2)」への協力など多岐にわたり活動中。あいく会では、「あそかの木保育園」を運営。高齢者も障害者も子ども達も、みんなが一緒に暮らせる「あそか村」をつくるという夢に向かって、取り組みを進めている。
社会福祉法人明照会 http://www.asokaen.or.jp

※1「介護男子スタディーズプロジェクト」http://www.kaigodanshi.jp
※2「つむぐもの」http://www.tsumugumono.com

ロボットではできない仕事、人と人が支えあうのが福祉・介護の仕事

福祉・介護の仕事は、「しんどそう」「お給料が安そう」というイメージを持っている人が多いようです。実際には、ちゃんと収入も得られますし、あそか苑で働いている介護スタッフは、本当にイキイキと働いています。

ITが普及してくると、販売、経理事務、レジ、運転手、案内係などをはじめ、多くの職業がなくなっていくと言われています。一方で、セラピスト、作業療法士、医療ソーシャルワーカー、消防士など、医療や福祉に関する仕事は残ると言われています。つまり、どれほどIT技術が進歩しても、機械が取って代わることが出来ない仕事、人と人とが関わり支え合う仕事、それが福祉・介護の仕事です。

常に不足する介護人材、色んな人の力で介護業界を支える

日本の労働人口が減少し続けている状況で、介護業界は飛び抜けて人手不足です。介護業従事者の多くは女性で、介護施設では74.5%、訪問介護では89.9%が女性の介護従事者です。女性が活躍している業界でもあります。

2013年度に171万人だった介護従事者ですが、2025年度には253万人の介護従事者が必要になると言われています。国では、今のまま推移した場合に不足する約38万人を確保しようという取り組みを進めようとしていますが、介護業界から他の業界へと人が流れる時代であることを考えると、82万人を確保する取り組みが必要だと感じています。

この状況を乗り切り、介護や福祉を支えるためには、子育て中や子育て後の女性、他職種、若者、障害者、高齢者外国人も、色んな人の力が必要になります。つまり、働く側、介護従事者が多様であること、ダイバーシティを進めることが求められているのです。

厚生労働省介護人材確保地域戦略会議(第3回)(H27.8.20-21) 資料2-1「介護人材確保の総合的・計画的な推進 ~「まんじゅう型」から「富士山型」へ~」より

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/document2-1.pdf

介護をする側も、される側も「ごちゃ混ぜ」

現在、あそか苑ではフィリピン人やインドネシア人、合わせて15人の外国人スタッフが仕事をしています。平成20年から務めている人は、後輩に指導するようになってきました。結婚し、出産間近の外国人スタッフもいます。利用者からの不満や違和感を心配する声もいただきますが、全く問題はありません。外国人スタッフのホスピタリティーは非常に高く、自然に車椅子の高さまで目線を下げて話しかけることが出来るなど、介護人材としては素晴らしい能力・素質を持っています。

高齢でも現役で活躍しているスタッフもいます。スタッフ最高齢は75歳ですから、自分よりも年下の利用者のケアをしている場面も多々あります。介護する側も、年齢や国籍で枠にはめてしまうのではなく、みんなが「ごちゃ混ぜ」になりながら、力を合わせて介護をしているのが現状です。

一方で、介護サービスを受ける側も、「ごちゃ混ぜ」になってきています。福祉の業界は、高齢福祉と障害福祉がそれぞれに制度を持っていますが、医療の進歩などによって、高齢になった障害者が介護サービスを利用するようになってきました。障害者福祉と高齢者福祉が近づいてきたということです。

介護保険事業所の指定を受けていれば、市町村の判断により、障害福祉サービスを提供することが可能となるため、「富山型デイサービス(※3)」のように、一つの建物の中で、高齢者も障害者も子どもも過ごす形態も現れはじめました。このような状況を踏まえて、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイなどを、高齢者もし障害者も同じく利用できる「共生型サービス」という制度が、国の施策として新たにスタートしようとしています。介護をする側も、される側も、「ごちゃ混ぜ」の状態になってきています。

(※3)「富山型デイサービス」富山県厚生部厚生企画課WEBサイト
http://www.toyama-kyosei.jp

 

楽しい未来に向かって「得意なこと」「好きなこと」を仕事にする

「富山型デイサービス」は、一人の女性が考案し、NPO法人を立ち上げ、一つ一つ実行に移していき、実現したサービスです。高齢者も、若者も、自由な発想から自分の周りに仕事を創り出すことが出来ると思います。
自分の「やりたいこと」と「求められていること」が重なれば、ボランティアとして実現することが出来ますし、自分の「得意なこと」と「求められていること」が重ねれば、仕事になります。「やりたいこと」と「得意なこと」と「求められていること」が重ねれば、とてもやりがいのある仕事になるでしょう。

私自身の夢は、「あそか村」を作ることです。そこでは、認知症になることも普通のことで、買い物もお出かけも恋愛も出来ます。障害者が働いていて、普通に一人暮らしをし、結婚をしています。村の中では、子どもたちが希望をもって、遊び、学んでいます。「あそか村」を実現するために、出来る事を一つずつ積み上げています。

特別養護老人ホームで障害者が働いていたり、泣いている子どもを高齢者があやしていたりします。保育所に、高齢者が遊びに行って、子どもや障害者と一緒にダンスの練習をしています。三世代ダンスコンテストも開催しています。

自分の夢に向かって進むことが、仕事になり、介護・福祉を支えていると思います。
「あそか村」が誕生したら、私は「村長」と呼ばれるようになって、また村民と一緒に楽しい未来に向かって進んでいきたいと思います。