メールマガジン Vol.185(2023/10/20発行)

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一般財団法人ダイバーシティ研究所 メールマガジン
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Vol.185 (2023年10月20日発行)

当事者性と専門性で「自治」を取り戻す装置としてのNPO

 8月末、仙台で「加藤哲夫さんの宿題を考える会」に参加しました。「せんだい・みやぎNPOセンター」の代表として、また環境保護やHIVと人権の世界でも1980年代から市民運動のリーダーとして活躍されてきた加藤哲夫さんは、2011年8月に他界されました。13回忌の節目となる今夏、ゆかりのあるメンバーで会を企画し、私もそのメンバーとして全体構成やセッションのモデレーターを担当しました。

 加藤哲夫さんと私が直接一緒にお仕事をさせて頂いたのは2000年頃からで、多文化共生の担い手を育成する「多文化セミナリオ」という研修や、日本財団が立ち上げた「CANPAN」のアドバイザー会議などでご一緒しました。私には仕事でご一緒させて頂いたことよりも、その前後で重ねた加藤哲夫さんとのコミュニケーションの記憶の方が強く残っています。私よりももっと身近で働いていた人たちにとって加藤哲夫さんの仕事や社会に対する「まなざし」は時に厳しすぎ、ちょっと辛いなと感じた方も少なくなかったようですが、加藤哲夫さんが大切だとおっしゃっていた言葉の数々は、私のいまの価値観や思想を形成する上でとても貴重なものとして私の中に生き続けています。

 阪神・淡路大震災をきっかけに市民活動が法人格を得て契約の主体となって行政や企業とともに公共の担い手となることへの関心が高まり、1998年にNPO法が成立、施行しました。その後NPOと行政との「協働」が叫ばれ、委託契約を結んで公共のNPOは増えました。加藤哲夫さんはNPOが行政から委託を受けて仕事をすることは「自治の取り戻し」であるとよくおっしゃっていました。これまでは行政に公共の仕事を委託していたが、これからは当事者性と専門性の高い市民が自ら地域の課題を治めていくのだ、民間企業への委託とNPOへの委託はそもそも意味が異なる、コストを下げるための委託ではなく、これまで行政に委ねてきた自治を取り戻すプロセスなのだと。

 ダイバーシティ社会を推進する上で、この「自治の取り戻し」という発想はとても重要です。行政のしくみは市民が納めた税をもとに同じ施策を公平に分配するには優れていますが、ひとりひとりのニーズに合った施策を提供するには不向きです。専門性に加え、当事者性の高いNPOが質の高い取り組みを行ってこそ、人の多様性に配慮のある社会を形成することができます。NPO法の成立・施行から25年が経ちましたが、現状はどうでしょうか。

 私は自治を取り戻す装置としてのNPOの機能はこのところ後退しているように感じます。景気の後退で民間の企業も行政からの委託に次々と参入し、当事者性はおろか、専門性も低いところが価格だけで委託契約を落札していく事例が各地で起きています。阪神・淡路大震災で発見した市民活動の重要性と、自治を取り戻す装置としてのNPOの機能を改めて見つめ直し、ちがいを認め合い誰もが活躍できる社会の再構築に臨まなければならない。8月末の仙台での熱い議論から、そんな思いを新たにしました。

一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事
田村太郎


【田村登壇のセミナー1 2023年 10月〜 】

公益財団法人かめのり財団
2023年度 多文化共生地域ネットワーク支援事業
現在、国内では外国人の受け入れや共生施策への必要性や機運が高まる一方で、地域における推進の担い手が不足しているという状況です。このような状況から、担い手と、事業を進める組織の育成が急務と考え、多文化共生に向けた担い手育成とネットワーク形成のため研修会およびネットワーク会議を実施し、地域で多文化共生を推進する核となる人材が集い、相互研鑽する場となることを目的とします。

以下の3つのプログラムで構成されます。1と2は参加必須です。
 1 かめのり多文化共生塾
 2 多文化共生の担い手ネットワーク会議
 3 事業助成
対象地区 / 協力団体名 / 会場
東海・北陸地区/犬山国際交流協会/犬山市民交流センター「フロイデ」
近畿地区/NPO法人場とつながりの研究センター/三田市まちづくり協働センター
北海道・東北地区/奥州市国際交流協会/水沢地域交流館(アスピア)

詳細: https://www.kamenori.jp/network2023/ 
応募締め切りと申し込み先
  東海・北陸地区:10/17 締めきりました
  近畿地区:10/24 https://forms.gle/ob4HTgfNxnxxYM7b9
  北海道・東北地区:10/30 https://forms.gle/atcnJFXGygSNcxo79


【田村登壇のセミナー2  2023年11月11日 東京】

HAPIC ブレイクアウトセッション
「外国人と共に生きる社会へ-多文化共生を推進する官民連携のあり方とは?」

2018年の外国人労働者の受入れや共生社会のための環境整備に関する閣議決定を受け、日本の外国人受入れをめぐる状況は大きく変化しています。2022年6月に政府は「外国人の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」で、2026年までの5年間に政府が取り組む重点施策をまとめた「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を決定し、各省庁で補助金を交付したり人材の育成や国家資格化を図ったりすることで、外国人との共生社会に向けた環境整備を進めてようとしています。
一方、日本語教室や通訳・翻訳を通じて地域の外国人の暮らしを支えてきたのは、多くの市民団体や外国人コミュニティです。本セッションでは、こうした政府の動きを踏まえ、官民連携による多文化共生社会の形成をどのように進めていけば良いのかを地域の事例も交えて議論します。

https://hapiconf.com/programs/session/2156/

■日時:11月11日(土)11:30-12:30
■登壇者:
草壁 京氏     (総務省 自治行政局 国際室長 )
田村 太郎氏 (一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事)
新居 みどり氏(NPO法人国際活動市民中心(CINGA) コーディネーター)
石川 えり氏 (認定NPO法人難民支援協会 代表理事) 
山路 健造氏 (人とヒトの幸せ開発研究所 代表)
※参加にはHAPICのチケット購入が必要です。
◆詳細・チケットのお申込はこちらから: https://hapiconf.com/


【お知らせ】

1.外国人のための「生活の漢字」教室(神戸)
当研究所では文化庁の委託事業として外国人のための漢字教室を開催します。
外国人の方への紹介をよろしくお願いします。

外国人のための「生活の漢字」教室
日 時:2023年11月10日、17日、24日、12月1日(毎週金曜日、全4回)17:45~19:45
場 所:神戸学生青年センター本館West
参加費:無料
定 員:20名(申込み多数の場合は抽選)
主 催:一般財団法人ダイバーシティ研究所(『生活の漢字』をかんがえる会)
*文化庁「令和5年度「生活者としての外国人」のための特定のニーズに対応 した日本語教育事業 地域日本語教育実践プログラム」
申込み・詳細:  https://diversityjapan.jp/kanji_class_kobe2023/

2.大阪事務所移転のお知らせ
2023年11⽉1⽇より、大阪事務所が下記に移転し、電話番号も変更となります。なお、新事務所はバーチャルオフィスとなりますのでご来訪の際は事前のご連絡をお願いします。

〒532-0011
大阪市淀川区西中島6丁目3番24号 北白石ビル西館4F 404
一般財団法人ダイバーシティ研究所
TEL: 06-6105-3245

また電話につきましても受付後に折り返して連絡とさせていただきますので、お手数ですがいちどメールにてお問合せいただけますと幸いです。担当者から折り返しご連絡いたします。

office@diversityjapan.jp

※なお、東京事務所に変更はありません。

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発行日:不定期
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〒532-0004 大阪市淀川区西宮原 1-8-33
日宝新大阪第2ビル802
Tel: 06-6152-5175 Fax:06-6195-8812
2023年11月1日以降
〒532-0011 大阪市淀川区西中島6丁目3番24号 北白石ビル西館4F 404
TEL: 06-6105-3245