課題と目標の設定

今回は「課題と目標の設定」についてです。
皆さんには「自分が取り組みたいソーシャル・ビジネスのテーマ」について、「〇〇を□□にする△△事業」という形式で書いてもらっています。

「対象とする課題」は、実はわかっているようで難しい


適切な課題を設定するためのポイントは、表面に現れている問題についてデータを収集して、背景や原因を調べ、改善すべき事柄を明確にすることです。
例えば、「頭がいたい」というのは、課題ではなく現象で、表出している問題にすぎません。
なぜ頭が痛いのか、背景や原因を調べて分析することが必要です。「頭が痛いから薬を飲む」では課題の解決にならない。問題だけにとらわれると本質にたどり着けない。
実は皆さんが今「課題」として書いていることは、まだ「問題」にもなっていないのです。

改善すべき事柄を明確にする手順
改善すべき事柄を明確にするには、次の4つの手順がポイントです。


①対象を絞り込む
地域や年齢・性別を限定する、期間を区切るなど、対象を絞り込んでデータを集めます。例えば9月1日は子供の自殺が多い。この背景の一つは、新学期始まることです。単に「自殺者数が年間何人」ではなく、「いつ」を絞ってわかることです。対象を絞り込んでデータを集めることが大切です。
②比較する
比べないと何もわかりません。他国間や地域差、子供と大人など。あるいは10年前と比べる。そうすると課題が見えてきます。

③ミクロとマクロを交差する
例えば「不登校が10万人いる」ことと、「Aさんは〇歳で不登校になって今はどうなっている」を交差させる。数値と事例を交差させると、やるべきことがわかってきます。データだけでは人は動いてくれません。事例が必要です。
④優先順位をつける
例えば、自殺対策として、「子供より50歳代の経営難の人たちの対策をする」としたとき、なぜ取り組まなければならないかを、優先順位をつけて示す必要があります。

以上が課題の設定の仕方の基本です。こう言われると、自分が今書いたものが課題じゃないと思いませんか?それでいいです。

目標設定のポイント
課題の次は、目標の設定です。適切な目標を設定するポイントは、「SMART」と呼ばれています。非常に有名です。


成果の出るビジネスプランの目標は、「行為目標」ではなく「状態目標」とすることを強く意識します。
「行為目標」は「何を何回するか」で、ほとんどの人がこれを書いてしまう。これに対して、対象とする課題の「状態」を改善することがソーシャル・ビジネスにおける「成果」です。「腕立てを100回すること」は行
為目標で、「どれくらいの筋力をつけるのか」が状態目標です。
状態の変化が成果すなわちOut comeであり、この成果に対して収入すなわちIncomeがあります。「働いていること」ではなく、「働くことによって生み出された状態の変化」にお金が支払われるのです。


図6-3は、状態目標からスタートするビジネスサイクルのイメージ図です。
プラン立案時は、まず「状態目標」を決めます。次に「行為目標」が決まり、そして「投入」が決まる。そのためにいくら「収入」がいるか、という順になります。

事業を実施する時は逆巡になります。
一般のマーケティングでは、「状態目標」がありません。特に行政はこのタイプが多くみられます。これではいつまでたっても世の中が良くなりません。