日本の日常で戦渦を生きる人々に出会う
〜ウクライナ避難民と見えづらい戦争犠牲者「ロマ」の人々について〜
初めまして、私はフォトジャーナリストの小原一真と申します。現在、JR大阪駅から徒歩10分ほどにある梅田スカイビルで写真展「ウクライナ避難民とロマの人々」を開催しています。9月11日まで開催しておりますので、お近くの方は是非、スカイビルの空中庭園に続く3階の通路を目指して、展示をご覧いただけたら幸いです。17枚の大判ポートレート写真と4枚の風景写真が展示されています。
2022年3月、私はウクライナ避難民の最大受け入れ国であるポーランドへ向かいました。2015年から2年間にわたり、チェルノブイリのドキュメンタリープロジェクトを行っていた私は、そこで多くの大切な出会いに恵まれました。2月のロシア軍のウクライナ侵攻後、その友人たちが避難民となったり、兵士として戦ったり、そして、ロシア軍の占領地域での生活を余儀なくされました。私は、自分に何か出来ることはないだろうかと様々な人の力を借りながら、100名ほどの避難民の撮影を行いました。戦争が長引き、未来への不確かさが増していく中で、戦火を逃れてきた人々の避難と心的状況について、話を伺ってきました。
6月、私は再び東ヨーロッパへ戻りました。3月に撮影出来なかったウクライナのロマの人々を取材をするためでした。ロマとはヨーロッパ各地に住んでいる少数民族で、文化・生活様式、肌の色の違いなどから、「ジプシー」と呼ばれ歴史的に差別・迫害されてきた人々です。ウクライナ国内には40万人のロマ民族が暮らしていると言われています。私は、チェコ、モルドバでロマの人々の避難所を訪れ、戦時下でさえも不平等な保護の下、生活を続けている人々に出会いました。それから、ウクライナのオデーサ州にあるロマコミュニティーを訪れました。極度の貧困状況にあり、避難する資金さえままならない人々、身分証をもたないためにウクライナ軍の検問所さえ越えられずに、避難の選択肢を持たない人々に出会いました。戦時下、立場の弱いマイノリティーは、平時以上の困難に直面しながら孤立状況に置かれています。
日常の暮らしの中では、ウクライナ避難民やロマの人々を目にする機会はほとんどないと思います。だからこそ、戦時下を生きる人々の存在を、私たちの生活の中で少しでも感じ、目に見えない彼女たちの存在について考えるきっかけとなることを願っています。
小原一真(フォトジャーナリスト)