厳しさを増す社会の中からどんな希望を見いだすか?
東日本大震災の翌年から毎年、大阪で開催している復興応援事業「3.11 from KANSAI」が今年も開催され、キーノートスピーチとパネルディスカッションの進行役を担当しました。キーノートスピーチでは毎年、1年間の東北の変化について統計を元に解説し、関西からの関わり方のヒントをお話ししています。コロナ禍だったこの1年はふりかえるのも辛く、いつもよりは視線が下がりがちのスピーチとなってしまいましたが、参加者の方からは「うなずくところが多かった」との感想を頂きました。
さまざまな工夫を凝らし、復興への道を切り開いてきた人たちを襲ったコロナ禍は、本当に不条理です。また比較的感染者が少ない東北では、人々の行動への視線は厳しく、家族であっても遠方からの訪問がためらわれる状況にあると聞きます。本来なら「復興五輪」が開催され、世界から頂いた支援に感謝を伝え、次の10年に向けた本格復興への道のりを進んでいこうという空気が満ちていたはずの2020年がこんなことになるとは、誰が予想したでしょうか。
計画されていた宅地の造成や公営住宅の整備はほぼ完成し、被災した農地も水産加工施設も9割以上が復旧しました。しかしここまで10年かかってしまった。阪神・淡路大震災では5年で公営住宅が完成していますから、おおむね2倍の時間がかかったことになります。一方で人々は10歳、年を取りましたので、東北での復興に向かう厳しさは阪神・淡路の4倍くらいに感じられると思うのです。阪神・淡路を経験した関西の人にはそうしたまなざしを持ちながら東北のこれからを見続けて欲しいとお話ししました。
東北以外でもコロナ禍がもたらした影響は、社会のより立場の弱い人により大きく出ています。この10年の東北の復興で培われてきた経験をもとに地域のセーフティネットを厚くし、厳しさを増すであろうこれからの人々の暮らしが少しでも安心できるものとなるよう精進しなければならないと感じます。これからも東北はじめ、各地の取り組みに力を注いでまいります。引き続きご支援のほどどうぞよろしく願いします。