為政者への期待
2026年初のメールマガジンを配信いたします。本年もどうぞよろしくお願いします。
この巻頭言でも何度か書きましたが、私は1990年から1991年にかけて、神戸を出発して中国からシベリア鉄道経由で欧州へ向かい、東西ドイツが統合されて初めての年越しをベルリン・ブランデンブルグ門の下で過ごしたあとはアフリカへ渡って「貧乏旅行」をしました。また1992年から1993年にかけてはアフリカと南米を回りました。国境をまたぐだけで人々の暮らしが一変する状況に何度も遭遇し、その地を統治する人の能力が与える影響がこんなにも大きなものかと驚きました。
当時は東西冷戦が終結した直後で、旧共産圏では混乱が続いていました。まだソ連だったモスクワから夜行列車に乗り、ヘルシンキに到着したときにはまるでちがう星に来た気分でした。西欧と東欧を何度か行き来したのち、マルセイユから船でアルジェに着いたときもまた同種の衝撃を受けました。アフリカや南米では政治や経済は混乱していましたが、人々はドシッと構えて日々を暮らしているように感じました。貧しさは確かに感じられるものの、異国の地から来た旅人に関心を寄せ、まだ見えない何かに将来への希望を探ろうという意気込みがありました。
日本を訪問する外国人観光客数が昨年1年間で4,000万人を越えたそうです。私が外国人なら、日本という国は本当に魅力にあふれ、何度も訪ねたい国だと思います。他の国にはない文化や風景があり、人々は優しく、治安も良い。さらに円安で物価も安い。一方で、急増する訪日外国人への日本人からのまなざしは年々厳しくなっています。同時に日本で暮らす外国人へのまなざしもまた、厳しくなっています。外国人からは、日本はどのような国に見えているのでしょうか。これからも「良い国だな」と思ってもらえるような国であればいいなと思います。
旅行者としていろいろな国を訪れた経験から、「良い国だな」と思える国は、人々の暮らしが落ち着いている国です。風向明媚な場所でも、物価が安くても、ダイヤ通りに電車やバスが動いても、そこに暮らす人々がうつろな目をして未来に希望が持てないような国には行きたくありません。またそうした国からは人々は流出し、いずれ崩壊へのスパイラルに陥っていきます。転落への道を歩むか、人々の暮らしが安定するかは、時の為政者次第。またその為政者を選ぶのはそこに暮らす人々です。短絡的な利益を求めず、冷静に国のあり方を見据えて為政者選びを行いたいものです。
ダイバーシティ研究所 代表理事
田村太郎